分泌物の放出過程(exocytosis)では、球から平面への移行を、物質の細胞内への取り込み(endocytosis)では、平面から球の形成を見る。また管を考えるとちょうど粘土の平板に棒を押し込んだように、円筒状の外分泌腺の導管が形成され、平板状の溝が落ち込んで神経管の円筒が作られる過程も生物のかたちの滑らかで自由なかたちの推移を表している。
円柱や円筒の渦巻への変化はかたちの最も華麗な変身であろう。オシロイバナの雄しべの円柱は花が蕾むと渦巻状に身を縮める。巻貝の類の祖先形は真直ぐな円筒状であったらしい痕跡もある。
球を根源とした生物のかたちと多面体、円柱、円筒、平面、さらには渦巻への見事なまでの変容こそ生物のかたちの特徴であろうと考えている。
宇宙を満たす諸々のかたちの不可思議さは、生物と非生物的自然現象が時として、共通のかたちを表すことであろう。星雲やカルマン渦がつくる渦巻は巻貝やポリゾームの渦巻の成り立ちとどのように関わっているのであろうか? 何故砂丘の風紋と、指紋、掌紋、魚の鱗の溝と畝がほとんど同じパターンを描くのであろうか?
退職後ふんだんにある自由な時間を使って、生物の多様なかたちを楽しみ、とつおいつ、かたちの謎を解きほぐしたいと考えているところである。現在、一連の仕事を「かたちの記録」として『ミクロスコピア』に連載している。